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官能評価✕AIで製品開発を推進

更新日:9月2日

近年、製品開発の競争がますます激化し、消費者の期待は高まる一方です。製品の成功は、その品質や実用性だけでなく、官能的な魅力も重要な要素となっています。従来の官能評価方法は時間とリソースを多く必要とし、効率的なプロセスを妨げることがありました。しかし、テクノロジーの進化により、AI(人工知能)を活用した新たなアプローチが可能となりました。本記事では、官能評価とAIの融合が製品開発においてどのように革新的な変化をもたらすかについてご紹介していきます。


【目次】

官能評価技術① 五感を定量化する技術

官能評価技術② 質感/味わいの違いを可視化する技術

官能評価技術③ 製品の質感/味わい・食感を制御する仕組みづくり

質疑応答

 

官能評価技術① 五感を定量化する技術


感性(=様々なモノ・コトを見る / 触る / 味わうなどして五感で知覚し感じる能力)で感じとったモノ・コトの印象(質感、味わい、など)を、人は言語の情報(例:「さらさら」「とろり」などの擬音語擬態語オノマトペ】)で表現します。


感性AIでは、この人の感性に結びつく様々な言語情報を、人工知能(AI)により定量化することを得意としており、感性を表現する言語情報を数値化・定量化し潜在的な印象を掘り起こすことにより、

感性を活かした製品開発から販売までをトータルでサポートしています。


例えば、味わいを表現する「さっぱり」と「じゅわあ」について

味わいに関する形容詞の尺度軸を用いて以下のように数値化することで、

違いを定量的に把握することが可能です

味わいを表現する言葉についてAIが印象を官能評価

また、視覚・触覚に関する形容詞の尺度軸を用いて「ふわふわ」と「さらさら」を以下のように数値化することが可能です。

視覚・触覚の印象を表現する言葉についてAIが官能評価

このように、ヒトの感性を数値化・定量化する技術が、感性AIのコア技術である「感性評価AI”Hapina”」です。この技術によって、モノの質感や味わいを数値化したり、商品名の印象を数値化したりすることが出来ます。


AIがモノの質感や味わい、商品名を官能評価

実例を紹介すると、

プラスチック製模造金属をより実金属に近づけるために、

被験者実験で実金属と模造金属を見せてその質感から直観的に浮かんだオノマトペをこの感性評価AI”Hapina”に投入し数値化することで、

「滑らか-粗い」の評価尺度に大きな差があること(模造金属のほうがより「滑らか」と感じ取ること)がわかり、凹凸を深くし表面が粗くする加工を施すことにより、より実金属に近づけることが可能となりました。

 

官能評価技術② 質感/味わいの違いを可視化する技術


このように数値化・定量化することができる製品の感性的な質感の違い、味わいの違いを、ポジショニングマップでわかりやすく可視化することができます。


例えばこちらは、日本酒とワインの味わいの違いに基づいて作られたマップです。

味わいの感じ方を感性評価AI”Hapina”で数値化し、統計処理することにより、このような形で各々のお酒の味わいをポジショニングマップ化することが可能です。

例えば、商品企画・開発の場面における自社商品の質感や味わいの観点でのポジショニング把握や、営業・販促の場面でお客様へ質感や味わいの違いを分かりやすく伝える手法の一つとして活用いただいております。

日本酒とワインの味わいの違いをAIがポジショニングマップ化

また、こちらは素材(プラスチック)を触り心地の違いに基づきマップ化したものです。マップで可視化することにより、自社製品が集中しているエリアが分かったり、逆に、自社製品のラインナップにまだあまい無い触り心地のエリアが分かったりします。

素材の触り心地の違いをAIがポジショニングマップ化

 

官能評価技術③ 製品の質感/味わい・食感を制御する仕組みづくり


例えば、商品企画・開発の場面にて、

・イメージする味や食感を実現する配合を探るのに、多くの時間を要している

・商品企画担当と商品開発担当との間での意思疎通や思いの共有が難しい

などの課題感・問題感がありませんか。


感性AIでは、官能評価値とレシピ配合値・物性値をAI学習することによって、所望する質感を表す官能評価値やオノマトペを入力すれば、レシピ配合値や物性値が定量的に出力される仕組みづくりをサポートします。


例えば、硬柔感や乾湿感など所望する官能評価値を数値で入力いただいたり、もしくはポジショニングマップ上の任意のポイントを選んでいただく、あるいはオノマトペの表現を入力していただくと、

食品であれば、その味や食感を実現するためのレシピ配合値

繊維や金属などの素材などであれば物性値

が算出されるというイメージです。


官能評価値からレシピ配合値・物性値を予測するAI

上の図の右下のシステム画面は、過去に開発したパンの材料配合推薦システムの画面です。

こちらには、欲しい食感としてオノマトペで「さっくり」と入力されています。

そして、この「さっくり」を実現するための配合が、砂糖がどれくらい、ドライイーストがどれくらい…というレシピ配合値が出力されています。


このように、各企業様でお持ちのレシピ配合値・物性値のデータや官能評価に関するデータを活用しながら専用のAIモデルを新規開発することで、ものづくりにおけるDX推進のサポートをさせていただいております。



 


以上のように、感性AIでは官能評価に関する様々な取り組みを進めております。

ご興味がありましたら、ぜひお問い合わせください。



 

質疑応答

講演後の質疑応答の一部は、以下の通りです。

(内容につきましては、ご理解いただきやすいよう部分的に加筆・修正をしております。)


Q.1 

AIによるオノマトペの数値化による結果はおおむね納得できる結果となるのか?

A.1 

本技術については、精度評価実験を繰り返し実施し、その一部は論文においても結果を公表しており、システムによる予測結果と被験者による実測値の間に、1パーセント水準で統計的に有意な相関があることが確認できております。


Q.2 

感性を全く新奇のオノマトペで表現された場合、印象をどのように解析するのか?

A.2

新たなオノマトペの印象を評価する場合、そのオノマトペを音韻単位に分解した上で、音韻ごとの印象を定義したデータベースに基づき、印象を算出します。日本語のオノマトペで使われる音の単位(音韻要素)を網羅した300個程度のオノマトペについて、その印象を視覚や触覚、味覚等に関する複数の評価項目ごとに評価してもらう心理実験を行うことにより、音がどのような印象と結びつくかを数値的に特定しデータベース化しています。


Q.3

人それぞれ感じ方は微妙に異なると思うが、同じものを見てその特性をどれくらい同じ表現(オトマノペ)であらわされるものなのか?

逆に、一つのオトマノペからヒトはどれくらい共通の事象を想像することができるのか?

A.3

同じ対象物を見ても、それをどう感じるのか、つまり感じ取り方(ラベリング)には個人差があります。なお当社には、その個人差を補正する技術もございます。

逆に、同じオノマトペから想像される印象には、基本的には個人差や属性差は無いことが学術的に知られています。


Q.4 

微妙な感性の差も識別できるものなのか?その場合、教師データも微妙な差を表している必要があるのか?

A.4

被験者の言葉の表現が少しでも異なっていれば、その差を反映させた上で数値化できます。

オノマトペを数値化する技術の場合は、音韻の細かい違いごとの印象評価データを教師データとしてモデル開発を行っていますが、これは汎用モデルであるため、お客様側では特段の教師データは不要です。一方で、専用モデルを開発する必要がある食品レシピ配合値予測モデルについては、食感や味わいの微妙な違いを配合値へ反映するためには、少しずつ配合値が異なる試作品などに対する印象評価データを教師データとして準備する必要があります。AI開発を見据えたデータの取得方法についてはお気軽にご相談ください。


Q.5 

AIの教師データにヒトの感性の個人差をどのように反映するのか?

A.5

教師データ作成における個人差の考慮方法は、実現したい詳細に応じて個別に検討する必要があります。一例としては、ある程度の人数の個人のデータを丁寧に収集し、似た属性の人を一括り(グループ)にして、平均値などをそのグループの代表として取り扱う、などが考えられます。


Q.6 

AIの数値化と、ヒトの感覚との違いで何か課題となっていることはあるか?

A.6

確かに、AIによる数値化は安定した結果が出る一方で、ヒトは時と場合によって予測とは異なる反応をする可能性がありますが、AIによる数値化においては、その可能性も加味した上で、平均的な結果が出されます。


Q.7 

日本と海外とでは文化の違いなどから、同じ音では受ける印象が異なるのではないか?

A.7

どういった音がどういった印象と結びつくかについては文化を越えた普遍性が知られており、その例としてはBouba/Kiki効果というものが有名です。この効果については、イギリスや中国・韓国でも実験が行われており、音のレベルでは共通性が確認されています。ただし、オノマトペという形での単語単位での理解という話になると、あくまでも「さらさら」「さっぱり」などのオノマトペ表現は日本語であるため、日本語を知らない海外の人がこれらのオノマトペを日本人のように理解することは難しいです。


Q.8 

官能評価時の評価用語には「ミルク感」「コク」などもありますが、官能評価用語がバラバラの状態でもAIにかけることは可能なのか?

A.8

当社技術にて数値化できる官能評価尺度軸はトータルで100種類以上ある中、現時点では「ミルク感」はございませんが、データ収集段階からお取り組みにご一緒させて頂くことにより新たな尺度軸を設定することも可能です。または、例えば「ミルク感」という言葉の定義について、弊社の100種類以上ある既存の官能評価尺度軸の中で「ミルク感」を「シャープな-マイルドな」「とろみがある-ない」「甘い-甘くない」として定義することで、当該数値を活用する、いうことも可能です。


Q.9

教師データとして、各サンプル数十程度の官能評価のデータの場合、ニューラルネットワークやディープラーニングに掛けても少なすぎて、PLS回帰や重回帰のほうが計算のフローも分かり適している部分もあるように感じるが、貴社ではどの程度のデータ数を掛ければよいという認識なのか?

A.9

レシピ配合を予測するAIの開発については、必要となる学習データ量は、予測する材料項目数など諸条件によるため、一概に申し上げることが難しいです。

また、我々としてもニューラルネットワークやディープラーニングといった手法を用いることが必ずしも最適とは考えておらず、PLS回帰や重回帰といった伝統的な統計手法を用いることも含めて、データ状況を見ながら最適な判断を行いつつ、モデルを構築しております。



その他、ご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。



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